見出し画像

そろそろあの件について書いておく。その4

こちらの続きです。

日本は今は大変無ことになってるらしいじゃないか

台湾の港湾当局(日本で言う海上保安官)が船のデッキでくわえタバコをふかしながら言ってきた。お前は日本に帰らなくてもいいのか?と言う雰囲気だった。嫁とも電話で話していて、長男が津波の映像をテレビで見て怖がって大泣きして寝付かなくて大変だったと聞いた。そうか、日本って大変なんだよな。日本の情報がなさ過ぎてそんな感じだった。そんな彼を置いて、自分はデッキフロアから一気に操舵室まで上がった。操舵室は非常に高いところにある。星空がよく見える。割と好きな場所だった。操舵室には監督、一等航海士、機関長、そして後任のキャプテンがいた。

後任のキャプテン

彼とも以前、別の所有船の修繕のときに一緒に仕事をした仲だった。若い秀才系のキャプテン。とても育ちが良さそうな人。背も高くてイケメン。新婚ホヤホヤだった(おっさんか)。

後任のキャプテンが亡くなった前任のキャプテンのNokiaの携帯電話を手に持っていた。どうやらずっと鳴り続けているらしい。前任のキャプテンの奥様からの着信だ。

監督が出てくださいよ

誰も出れないでいた。虚しくこだまするNokiaのあのメロディは、何年たった今も聞けばこの頃のことを思い出してしまう。

そしてキューっと胸が締め付けられるような想いになる。

監督が電話に出られないことは明らかだった。若いし、受け止められない。気がついたらまた代わりに電話に出ている自分がいた。

もしもし、船長は夕方、息苦しいと訴え病院に通院したのですが…(険しい顔で)先ほど残念ながらお亡くなりになられました…

と伝えたとたん悲鳴の様な鳴き声が受話器の向こうから聞こえてきた。そして間もなく、電話を切られた。結局、奥さんの兄弟と名乗る人と電話で話して状況を説明して、自分は自分の部屋に戻って、ウィスキーを煽ってからベッドに寝ころんだ。

←その3                   その5→

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

Cloud Architect/Consultant @ Tokyo

えっ、そんなに良かった?
6
難治性喘息・脊柱管狭窄症(椎間板ヘルニア)・便意と戦う技術系おっさん。技術系はQiitaとかに書いてます。 https://qiita.com/tokifuji

この記事が入っているマガジン

あの件
あの件
  • 5本

それな

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。